機能性表示食品は医薬品ではなく、疾病の治療・予防を目的としたものではありません。感じ方には個人差があります。体調や服薬状況によっては注意が必要な場合があるため、必要に応じてかかりつけ医へ相談してください。
「あの人の名前、なんだったっけ」「買い物リストを書いたのに、リスト自体を忘れた」
こうした経験は、加齢とともに誰にでも起こり得ることです。
厚生労働省の推計によれば、65歳以上の認知症の人は約600万人。認知症とまではいかなくても、記憶力の低下を日常的に感じている方はさらに多いと考えられています。
機能性表示食品の中には、「認知機能の一部である記憶力の維持」を訴求した商品が数多くあります。しかし、使われている成分はさまざまで、それぞれメカニズムやエビデンスの強さが異なります。
この記事では、記憶力の維持に関連する主な成分を比較し、それぞれの特徴と科学的根拠を解説します。
記憶力と機能性表示食品
機能性表示食品で「記憶」「認知機能」を訴求する届出は合計で約500件以上にのぼり、中高年向け健康食品の主要カテゴリの一つです。
記憶力を支える成分のアプローチは主に以下の3タイプに分かれます。
- 脳の血流を改善する — 脳に十分な酸素と栄養を届けて、記憶に関わる領域の活動を支える
- 脳の神経細胞を構成・保護する — 脳の細胞膜や神経伝達に関わる成分を補給して、脳の機能を維持する
- 神経伝達をサポートする — 記憶の形成や想起に関わるシナプスの働きを支える
記憶力維持に関連する主な成分
記憶力の維持を訴求する機能性表示食品に使われている主な成分は以下の通りです。
| 成分名 | 主な効果メカニズム | 総届出件数 | 認知・記憶訴求 | 詳細 |
|---|---|---|---|---|
| イチョウ葉エキス | 脳の血流改善+抗酸化 | 215件 | 215件(100%) | 詳しく見る |
| DHA | 脳の神経細胞膜の構成成分 | 340件 | 152件(45%) | — |
| ホスファチジルセリン | 脳の細胞膜の主要成分 | 29件 | 29件(100%) | — |
| バコパサポニン | 神経伝達のサポート | 23件 | 23件(100%) | — |
イチョウ葉エキス — 脳の血流を改善して記憶力を維持
イチョウ葉由来フラボノイド配糖体とテルペンラクトンの2成分が協力して働きます。フラボノイド配糖体が脳の血管を拡張して血流を改善し、テルペンラクトンが血小板凝集を抑制して血液の流れを促進します。
215件すべての届出が認知・記憶関連で、記憶力維持の専用成分として最も多くの商品に採用されています。ヨーロッパでは数十年にわたる研究の蓄積があり、ドイツでは医薬品としての使用実績もあります。
エビデンス: 健常な中高年を対象としたランダム化比較試験で、4〜6週間の摂取による記憶力(言葉や図形の想起)の改善が報告されています。メタアナリシスでも認知機能への有意な効果が示されています。エビデンスの蓄積は豊富です。

DHA — 脳の神経細胞をつくる脂肪酸
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、青魚に多く含まれるオメガ3系脂肪酸です。脳の神経細胞膜の主要な構成成分であり、脳の重量の約10%がDHAで構成されています。
DHAの届出は340件と多いですが、認知・記憶を訴求しているのは152件(45%)で、残りは中性脂肪の低下などが中心です。「中高年において認知機能の一部である記憶力を維持する」という表示が代表的です。
エビデンス: DHAの摂取と認知機能の関連は多数の疫学研究で報告されています。ランダム化比較試験でも、数字や図形の記憶テストで改善傾向が示されています。ただし、効果の大きさは研究によってばらつきがあります。
ホスファチジルセリン — 脳の細胞膜を構成するリン脂質
ホスファチジルセリン(PS)は、脳の神経細胞膜に多く存在するリン脂質です。細胞膜の柔軟性を維持し、神経伝達物質の放出に関与するとされています。大豆由来のものが多く使用されています。
届出件数は29件と少なめですが、100%が認知・記憶訴求という高い専門性を持っています。「記憶力が低下した健康な中高齢者の記憶力(言葉を思い出す力)の維持をサポート」が典型的な訴求です。
エビデンス: ランダム化比較試験で、ホスファチジルセリンの摂取による言語記憶の改善が報告されています。有効率は65%と安定しています。
バコパサポニン — アーユルヴェーダ由来の記憶サポート成分
バコパサポニンは、インドの伝統医学アーユルヴェーダで古くから使われてきたハーブ「バコパ・モンニエリ」に含まれる活性成分です。神経伝達に関わるシナプスの働きをサポートすると考えられています。
届出件数は23件と小規模ですが、100%が認知・記憶訴求、有効率82%と最も安定した成分です。「加齢により低下する日常生活で見聞きした情報を覚え、思い出す力を維持」という訴求が特徴的です。
エビデンス: オーストラリアやインドを中心に複数のランダム化比較試験が実施されており、記憶の定着や想起の改善が報告されています。研究の独立性が高い点が強みです。
成分の選び方ガイド
どの成分を選べばいいか迷ったときは、以下のポイントを参考にしてください。
悩み別おすすめ成分
| あなたの悩み | おすすめの成分 |
|---|---|
| 名前や予定が思い出せなくなった | イチョウ葉エキス(記憶の想起を改善) |
| 魚をあまり食べない、脳の栄養を補いたい | DHA(脳の構成成分を直接補給) |
| 覚えたことを時間がたっても忘れにくくしたい | バコパサポニン(記憶の定着をサポート) |
| 言葉がなかなか出てこなくなった | ホスファチジルセリン(言語記憶の維持) |
| 記憶力も中性脂肪もケアしたい | DHA(両方に機能あり) |
4成分の特徴比較
| 比較項目 | イチョウ葉 | DHA | ホスファチジルセリン | バコパ |
|---|---|---|---|---|
| 主なメカニズム | 脳の血流改善 | 神経細胞膜の構成 | 細胞膜の柔軟性維持 | 神経伝達サポート |
| 届出件数(認知系) | 215件 | 152件 | 29件 | 23件 |
| エビデンスの蓄積 | 豊富 | 豊富 | 中程度 | 中程度 |
| 効果を感じるまでの目安 | 4〜6週間 | 数ヶ月 | 数ヶ月 | 4〜12週間 |
| 価格帯(1ヶ月分) | 800〜2,000円 | 1,000〜3,000円 | 1,500〜3,000円 | 1,500〜3,000円 |
| 注意点 | 血液サラサラの薬と相互作用 | 魚アレルギーに注意 | 大豆アレルギーに注意 | 特に重大な注意なし |
選ぶときのポイント
- 飲んでいる薬を確認する — イチョウ葉は抗凝固薬との相互作用があるため、服薬中の方は医師に相談を
- 継続しやすさ — 記憶力への効果は数週間〜数ヶ月かかるため、続けられる価格帯と形態を選ぶ
- 複合的な悩みには複合型 — 記憶力+中性脂肪ならDHA、記憶力+目の健康ならイチョウ葉+ルテインの組み合わせ商品も
- エビデンスの量で選ぶなら — イチョウ葉とDHAは研究の蓄積が最も多い
代表的な商品
イチョウ葉系の売れ筋商品
| 商品名 | メーカー | 特徴 |
|---|---|---|
| シュワーベギンコ イチョウ葉エキス | アサヒグループ食品 | ドイツ製標準化エキス使用、売れ筋No.1 |
| イチョウ葉 脳内α | DHC | 810円/30日分の低価格 |
| イチョウ葉 | ファンケル | 通販大手の定番、定期購入で割引 |

DHA系の売れ筋商品
| 商品名 | メーカー | 特徴 |
|---|---|---|
| DHA&EPA+セサミンEX | サントリーウエルネス | DHA+EPAにセサミン配合、売上トップクラス |
| DHA1000s | 井藤漢方製薬 | DHA高含有、コスパ良好 |
| サトウDHA&EPA | 佐藤製薬 | 製薬会社ブランドの信頼感 |
ホスファチジルセリン・バコパ系の売れ筋商品
| 商品名 | メーカー | 特徴 |
|---|---|---|
| BRAINs(ブレインズ) | ファンケル | バコパ+熟成ホップ由来苦味酸、記憶力と注意力を訴求 |
| 記憶の小箱s | 日本新薬 | 製薬会社のバコパ専門製品 |
| 忘れるもんか | イムノス | ホスファチジルセリン、印象的な商品名 |
よくある質問
Q: 記憶力の機能性表示食品で認知症は予防できますか?
A: 機能性表示食品は「健常な中高年者の認知機能の一部である記憶力の維持」を訴求するものであり、認知症の予防や治療を目的としたものではありません。記憶力に不安がある場合や、急激な物忘れの悪化を感じた場合は、早めにかかりつけ医や物忘れ外来に相談してください。
Q: 複数の記憶力サプリを同時に飲んでも大丈夫ですか?
A: 成分の組み合わせによっては相互作用の可能性があります。特にイチョウ葉は血液サラサラ系のサプリメントや薬との併用に注意が必要です。複数のサプリメントを併用する場合は、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
Q: 若い人が飲んでも効果はありますか?
A: 多くの臨床試験は中高年(40〜70代)を対象としており、若年層のデータは限定的です。機能性表示食品の届出でも「中高年」を対象とした表示が大半です。若い方の記憶力向上を目的とした製品とは位置づけが異なります。
Q: 食事で記憶力に良い栄養を摂ることはできますか?
A: DHAは青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に豊富に含まれています。週2〜3回の魚食は脳の健康維持に有益とされています。イチョウ葉やバコパは通常の食事からの摂取は困難なため、サプリメントの活用が現実的です。
まとめ
記憶力の維持をサポートする機能性表示食品には、主にイチョウ葉エキス、DHA、ホスファチジルセリン、バコパサポニンの4つの成分が使われています。
- 記憶の想起(思い出す力)を維持したい → イチョウ葉エキス(215件、最多の届出実績、脳の血流改善)
- 脳の栄養を補いたい、中性脂肪もケアしたい → DHA(脳の構成成分、魚をあまり食べない方に)
- 記憶の定着力を高めたい → バコパサポニン(有効率82%、独立した研究が多い)
- 言葉の記憶力を維持したい → ホスファチジルセリン(100%が認知訴求の専門成分)
いずれの成分も効果を実感するには継続が大切です。自分の悩みと生活スタイルに合った成分と商品を選んでください。
参考文献
- Mix JA, Crews WD. “A double-blind, placebo-controlled, randomized trial of Ginkgo biloba extract EGb 761 in a sample of cognitively intact older adults.” Human Psychopharmacology, 2002; 17(6): 267-277.
- Kaschel R. “Specific memory effects of Ginkgo biloba extract EGb 761 in middle-aged healthy volunteers.” Phytomedicine, 2011; 18(14): 1202-1207.
- Yurko-Mauro K et al. “Beneficial effects of docosahexaenoic acid on cognition in age-related cognitive decline.” Alzheimer’s & Dementia, 2010; 6(6): 456-464.
- Kato-Kataoka A et al. “Soybean-derived phosphatidylserine improves memory function of the elderly Japanese subjects with memory complaints.” Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition, 2010; 47(3): 246-255.
- Calabrese C et al. “Effects of a standardized Bacopa monnieri extract on cognitive performance, anxiety, and depression in the elderly.” Journal of Alternative and Complementary Medicine, 2008; 14(6): 707-713.
- 消費者庁「機能性表示食品の届出情報検索」

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